弦楽四重奏曲 「特急白鳥函館行」

2019年に作曲した弦楽四重奏のご紹介です。ソナタ形式を真面目になぞった結果、演奏時間12分と長大になりましたので、配信では前半(序奏~提示部)・後半(展開部~コーダ)に分けています。

「白鳥」は津軽海峡、青函トンネルを通り本州と北海道を結ぶ特急列車でしたが、北海道新幹線開業により役目を終えて惜しまれつつも廃止に。大学時代、大学のある札幌と実家の青森との往復でよくこの列車を利用しており、津軽海峡を通るたびにキラキラとした水面をぼんやりと眺めているのが好きで、その懐かしさを曲のタイトルにこめてみました。

新幹線はあっという間に北海道まで連れて行ってくれますが、残念ながらあの海の綺麗な景色を楽しむことはできなくなってしまい残念です。

楽譜プレビュー

上の音源、前半1分40秒から3ページ分の譜面はこんな感じです。

譜面プレビュー1
譜面プレビュー2
譜面プレビュー3

それから少し飛んで、前半3分35秒辺りから3ページ分の譜面もご紹介します。

譜面プレビュー4
譜面プレビュー5
譜面プレビュー6

弦楽四重奏は作曲家のセンスが露わに?

弦楽四重奏は文字通り4本の弦楽器(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)で演奏される形態で、使える音が限られている中でいかに豊かなサウンドを構築していくかが勝負になります。とはいっても、弦楽器は複数の音を鳴らす重音奏法が可能ですし、左手のトレモロやアルペジオを駆使して派手に鳴らすのも比較的自在です。

もちろん、音の数を多くすればいいというわけでもなく、例えばベートーヴェンの後期作品は全音符などのゆったりとしたフレーズですべてを語るといった貫禄が伺えます。

個人的に「こういう風に書きたい」という憧れを持っているのはドビュッシーの作品で、特に1楽章の揺らめく音型の数々が、海のさざなみや鳥の羽ばたきなどを思い起こさせる気持ちのよいサウンドで、今回の制作中にもインスピレーションをもらおうと繰り返し聞きながら参考にしていました。

PCでの制作(DTM)について

使用音源は以下の通りです。

  • Vn (1st & 2nd) …… Emotional Violin
  • Va …… Embertone Fischer Viola
  • Vc …… Emotional Cello

まずEmbertoneから、ビブラートとダイナミクスを完全制御できるため弦楽器ソロの定番といえるほど人気になりました。一方でスタッカートは思ったほど小回りが効きません。モジュレーションかベロシティでショートノートの長さを制御できるのですが、長さを最大にしてもあまり余韻が長くならず、「テヌート気味に1音1音弓を切り返す」というフレーズで妙に歯切れが良くなってしまい思い通りのニュアンスを再現できなかった箇所もあります。

Emotionalシリーズはビブラートのコントロール等は不可能なものの打ち込みが圧倒的に楽で、特にEmotional Violinは大雑把な入力でも歌わせられるため時間短縮につながりました。嬉しいことにレガートの遅延もほとんどないため、打ち込んだ後のタイミング調整が不要で大変便利。

レガートパッチにはたくさんの種類の音色が用意されています。Vnの場合よく使ったパッチは、

  • Delicate Vib …… アタック遅め、ビブラートはだんだんとかかる。フレーズの入りに最適
  • Passionate Agile …… アタック早め、早いフレーズ向き。サスティンは長い。
  • Straight …… アタックやや早め。Passionate Agileより繊細で美しいがサスティンが短いので長いフレーズは不向き

という感じで、それぞれアタックやビブラートのニュアンスが少しずつ異なります。音色について、Vcは中庸ですがVnの方はかなり線が細くクラシック系特化なイメージ。Vnの方が後発な分、レガートのつながりは滑らかで、どんなフレーズでも違和感なく演奏できる対応力が頼もしくとても気に入って使っております。