カピバラ温泉動画やメシアンの音楽で米大統領選のストレスを緩和?!
2020年のアメリカ大統領選、開票スタートから丸2日が経った時点でこの記事を書いています。未だに決着がつかない大混戦状況ですが、ニューヨークタイムズの記事が日本でほんの少しだけ話題となりました。Spencer Bokat-Lindell氏の
Freaking Out? Here Are 5 Ways to Ward Off Election Anxiety
というタイトルなのですが、アメリカ社会の分断が顕著な中で、大統領選の結果を待つ不安な気持ちを和らげる5つの方法を紹介しています。
- 開票の決着がすぐにはつかないことを認識する
- ニュースから離れて休憩する
- 悲観的な気持ちを抑える
- 自分がコントロールできるものに目を向ける(※)
- アクティブであり続ける
※自分の支持した候補が不利になると自分の1票の無力さに落ち込むので、身の回りのことで自力で変えられるものは何かを考えてみようということ。
最後の「アクティブ」な活動の例で、散歩をしたり、お風呂に入ったりということを勧めており、入浴が好きでない人のためにカピバラ温泉の動画を紹介しています。
那須どうぶつ王国のカピバラたちが「ゆず湯」につかる動画なのですが、Youtubeのほっこり系動画が紹介された唐突さと大統領選とのミスマッチで、日本で密かな話題となりました。というわけで、この動画が「分断」融和の一つの糸口となることを期待しております(切実)。
なお、NYTは選挙疲れを癒やす特設ページまで用意しています。滝の音、動物のもふもふ動画や、タップするごとに大きくなるキノコの画像など色々あり、確かに効果はありそうですが、ここまでやらなければいけないほどアメリカ全土がピリピリしているということでしょうか。
メシアンでリラクゼーション?!
さて、本ブログで取り上げたいのはここから先で、記事を見てみてびっくりしたのが、気持ちを落ち着けるクラシック音楽として、何とメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」を紹介しているのです。
If you’re in the mood for classical music, Anthony Tommasini, The Times’s chief classical music critic, suggests taking 50 minutes to listen to a “mystical, ecstatic, contemplative and cosmic” work by Olivier Messiaen called “Quartet for the End of Time,” written for violin, cello, clarinet and piano.
タイムズ誌の音楽評論家が推している曲とのことで、本文ではメシアンが第二次大戦中に捕虜収容所でこの曲を書き上げたことにも言及し、Spotifyの埋め込みまでして取り上げています。1976年録音、Ensemble Tashiによる演奏がお勧めとのこと。
だいたい、リラクゼーションのためのクラシックと言えば、モーツァルトが定番で、他にはドビュッシーの穏やかなピアノ曲とかそういった部類のものが挙がると思うのですが、それを差し置いていきなりメシアンとは恐れ入ります。
確かにメシアンの音楽は、鳥の声を模した旋律線、揺らぎのあるリズム(※)、独自の旋法による緩やかな響きで、クラシックになじみのない方でも自然音のように聞くとリラックス効果があるのかもしれません。
※通常の拍子にちょっと音符を付け足してリズムを揺り動かしたり、回文(たいやきやいた、しんぶんしetc)のようにひっくり返しても同じになるリズム(不可逆リズム)を使ったりという色々なテクニックがあります。
メシアンの旋法については、「移高が限られた旋法の鍵盤早見表」を以前に作りましたので、こちらもご覧下さい。こういった作曲技法は自著の「音楽言語の技法」で披露されています。高価な書籍ですが、自分の手の内を惜しみなく明かしてくれる作曲家はまれだと思いますので、ぜひ手に取ってみてください。
もう一つ、癒やし効果のありそうなメシアンの曲としては、女声合唱をともなう「神の現存についての3つの小典礼」もよさそう。オンド・マルトノによる浮遊感ある響きが、ちょうどよいスパイスとなっています。