ハ音で結ぶ管弦小組曲
2022年4月に、バーチャルオーケストラのための小さな組曲をアップロードしたのでご紹介いたします。3曲セットの組み合わせで、偶然ではありますが全曲とも「ド」のバスで終わるため、「ハ音で結ぶ」管弦小組曲という名前にしてみました。
- 船のうえに
- 森のおくに
- 山のきわに
今作は2管編成、打楽器も一切入らないシンプルな構成で、去年制作した「序奏、マーチおよびワルツ」とは正反対となりました。個人的には大編成よりも規模の小さいオーケストラの方が好きなのですが、華やかさが出しにくい分創意工夫のセンスが試されているような気もします。
音源の試聴と楽譜の抜粋
連続再生の場合はYoutubeのプレイリストが便利です。
第1曲 船のうえに
舟歌的な3連リズムの楽曲で、ト長調ではありますが複調的にフラット系の響きも取り入れています。下の譜面は冒頭主題が再現されるところ、2分14秒からの譜面です。冒頭では弦楽器だったメロディーが、再現部は木管楽器の掛け合いとなっています。
第2曲 森のおくに
木管楽器が忙しく動く、やや無調的な響きとなりました。これは「ダイアトニックな響きのなかにオクタトニックを少しずつ混ぜ込んでいく」というストラヴィンスキー的なやり方を真似してみた結果なのですが、あまり思った通りの仕上がりにならなくて……なんというか、ストラヴィンスキーに比べると「ツヤ」が足りないような気がします。まだまだ修行が必要です。譜面は45秒以下のものです。
山のきわに
この曲だけ前年の作曲で、室内楽用途で書いてボツにした曲を、オケアレンジして復活させたものです。前の2曲に比べるとわかりやすく、だいぶ素直なハーモニーになっていると思います。下の譜面はラスト付近、3分30秒あたりからの抜粋です。
音源制作、DTMのお話
使用音源は次のものを使用しています。
- 弦楽器……LA Scoring Strings 3 + Cinematic Studio Solo Strings
- 管楽器……Cinematic Studio Woodwinds & Brass
- ハープ……Spitfire Harp
使用サンプルについて、今回はCinematic Studioシリーズをメインに据えましたが、肝心の弦楽器はLASSを土台として、ソロのCSSSを薄くレイヤーさせる方法をとっています。これは、弦セクションのCSSのビブラートがちょっとロマンティックすぎて、曲調に合わないかなと判断したからなのですが、さすがに2種類の音源を使う場合は打ち込みに時間がかかりました。次作からはCinematic Studioシリーズで統一して打ち込んでいく予定です。
弦楽器のLASSはかなりドライな音で、ホール録りの音源と合わせるのがなかなか大変でした。リバーブはBricasti M7のIRサンプル(BestServiceのHall of Fameを使用)がいい仕事をしてくれます。
打ち込みのワークフローはいつもと同じで、まず譜面作成ソフトのDoricoを使い、ピアノ2段分のラフスケッチを書きます。音色はそのままピアノを使います。これをもとに、オケスコアを書き進めていくのですが、このときのプレイバックはNotePerformerという音源で、オケの臨場感は全く出ませんが演奏のニュアンスをいい感じに読み取ってくれるので、いつも重宝しています。
そこからMIDIデータを書き出し、Cubaseに持っていきます。最初は奏法の指定(スタッカート、レガート……)とざっくりした強弱のカーブを書き曲の大まかな形を完成させ、それから細部を作り込んでいく流れです。