スコアリーディング用に、移調楽器と言語別楽器名をまとめました

スコアを読む際に一番の障壁となる、移調楽器の扱いを1ページにまとめました。オケスコアを念頭に置いていますが、一応吹奏楽の方のためにサックス系も用意しました。同時に、言語によって楽器名がわかりにくい場面がありますので、一緒に整理してみます。

木管楽器

まず、オケでよく使われる木管楽器について、言語別に楽器の名前を整理します。ピンとこない名称には色をつけました。

英語イタリア語ドイツ語フランス語
FluteFlautoFlöteFlûte
PiccoloFlauto PiccoloKleine FlötePetite Flûte
OboeOboeOboeHautbois
English HornCorno IngleseEnglisches HornCor Anglais
ClarinetClarinettoKlarinetteClarinette
BassoonFagottoFagottBasson

オーボエの仏語略称はHtbでなおさら分かりにくいです。フルートをピッコロと区別して書くときは「大きい」と言う意味の言葉(伊仏grande, 独grosso)を付け加えます。

フルート族〜クラリネット族の移調

次に移調楽器の一覧。矢印の左側が記譜音、右側が実音です。読譜の時も左から右に移調するように読んでみてください。

Fl~Clの移調楽器

1段目左がフルート族。アルトフルートはあまり使われません(魅力的な音ではありますが)ので、ピッコロが1oct上がることだけ確認です。

1段目右はオーボエ族。イングリッシュホルン(コーラングレ)は金管のF管ホルンと同様に完全5度、つまり線2本分下げます。

2段目がソプラノ(つまり普通の)クラリネットです。かつてはC管クラも(ロマン派中期くらいまで?)ありましたが今は使われていません。

3段目のバスクラはト音記号・ヘ音記号2通りの表記法があります。ト音記号の場合は通常のB管クラと同じ運指となり、実音はそれより1oct低い音が出ます。

小クラリネットは管弦楽の場合、たまに見かける程度の使用頻度です。Es管楽器は一般的にヘ音記号読みをすると分かりやすいのですが、この場合は音域が違いすぎるのでちょっと難しいかも。

ファゴット族

ファゴットは実音表記ですが、高音部にテノール記号を使うため、同じC音を表記したらどうなるかも載せました。

サクソフォーン

Saxの移調

これは吹奏楽の方向け。楽器の種類にかかわらず、同じ運指となるように表記します。記譜音より実音が上がることはありません。ソプラノの1oct下がテナー、アルトの1oct下がバリトンです。バリトンサックスはそのままヘ音記号として読めば楽。

金管楽器

こちらも楽器名からご覧下さい。

英語イタリア語ドイツ語フランス語
HornCornoHornCor
TrumpetTrombaTrompeteTrompette
CornetCornettaKornettPiston
TromboneTrombonePosauneTrombone
TubaTubaTubaTuba

現在の金管楽器はバルブ等の装置のおかげで、1つの楽器さえあれば一通りの音程が鳴らせます(※)。このため、近代以降のスコアの方が金管楽器は読譜しやすいです。

※私含め、金管楽器に触った経験がないと「当たり前じゃないか」と思ってしまうのですが、古い時代の金管楽器は基本的に倍音列にある音しか鳴らせず、「ドレミファソラシド」の音階も吹くことはできません。ベートーヴェンなど古典派の譜面を見てみるとよくわかります。ホルンはベルへの右手の出し入れで音程の制御がある程度可能なものの(ゲシュトップ奏法)、音質が変わります。

バルブ機構がなかった時代は、調性に合わせてたくさんの移調楽器が必要でした。下でちょっと並べてみただけでも、色々な調の楽器があることがわかります。

Tp, Hrの移調

トランペット

現代ではB管とC管の2つが主流(この2つだけ音符に棒をつけました)。D〜F管は上に、A〜H管は下方向に下げて読めば大丈夫です。

トランペットの運動性が今ほど高くなかった時代は、コルネットが併用されていました。こちらはB管またはA管で、同様に読めばOK。

ホルン

どの調であれ、実音は記譜音より必ず下になります。C管はそのままではなく1oct下げます。B管は、長2度だけ下げるものと、そこからさらに1oct(合わせて長9度)下がるものの2通りあるようです。

現在のスコアは、もっぱらF管で書きます(B管を合体させた「ダブルホルン」であっても)ので、読みやすくなりました。完全5度、線2つ分下げます。低音部がヘ音記号で書かれている場合は、完全4度上げます。

Hrのヘ音記号移調

その他

トロンボーンとチューバは実音表記。トロンボーンのテノール記号は後で解説します。

厄介なのがワーグナーチューバで、テノールBとバスFの2種類があるのですが、下図の通り表記が揺れています。左から3番目がよく使われている書き方とのことです。

  • ワーグナー「ニーベルングの指環」の最初、「ラインの黄金」では一番左の記譜を採用しています。
  • これに続く「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」では2番目の記譜法に変更されました。調が変わりましたが楽器自体は同じです。
    • バスチューバでヘ音記号の場合、長9度下げると音域外になるので、多分長2度だけ下げると思うのですが、明確な根拠が発見できませんでした。
  • ブルックナーの交響曲7〜8番では3番目の記譜を採用。
  • ブルックナーでも9番では一番右の表記に変わります。実音と距離が近いため、出る音のイメージはつかみやすいと思います。

弦楽器

英語イタリア語ドイツ語フランス語
ViolinViolinoVioline
(Geige)
Violon
ViolaViolaBratscheAlto
CelloVioloncelloVioloncellVioloncelle
Double BassContrabassoKontrabassContrebasse

仏語の略称が分かりにくいです。オケスコアだと上から順にVons, Altos, Velles, C.B.となります。Vnを独語でGeigeと書く表記は、「月につかれたピエロ」で見かけました。

移調に関して気にする必要はありませんが、コントラバスは1oct下げます。それ以外はハ音記号の読譜に注意。

  • ヴィオラは原則アルト記号、高音部でト音記号
  • チェロは原則ヘ音記号、高音部でテノール記号

ハ音記号については、中央のCから下をヘ音記号、上をト音記号的に読むと言われることが多いので、それを図表化してみました。左の大譜表を、アルト記号(右上)とテノール記号(右下)で表記するとこうなります。

ハ音記号の考え方

作りながら思ったのですが……うーんあまり役に立ちそうもないですね。結局、私は下のような読み方をしています。

  • アルト記号……音符1個分上げて、1oct下げる
  • テノール記号……音符1個分下げて、1oct下げる

なお作曲のお勉強で、対位法を実習するとハ音記号だらけの楽譜を読み書きすることになります。

このほか、弦楽器特有の問題としてフラジオレットの表記があります。これは別記事の「フラジオレットの早見表」をご覧ください。

打楽器その他

打楽器についてはすべて列挙するとキリがないので、言語ごとの差異が大きいものだけ載せました。

英語イタリア語ドイツ語フランス語
TimpaniTimpaniPaukenTimbales
Bass DrumGran CassaGrosse TrommelGrosse Caisse
Snare Drum,
Side Drum
Tamburo Piccolo,
Tamburo Militare
Kleinetrommel,
Militairtrommel
Caisse Claire,
Tambour (Militaire)
CymbalsPiatti, CinelliBeckenCymbales
TambourineTamburo Basco,
Tamburino
Schellentrommel,
Tambourin
Tambour de Basque
GlockenspielCampanelliGlockenspielJeu de Timbres,
Carillon

小太鼓はサイズも名称も様々ですので、この表だけではカバーしきれないと思います。小太鼓・タンバリンは伊福部管絃楽法の表を(p.192)、それ以外は主にピストン管弦楽法(下)の表記を参考にしました。

英語イタリア語ドイツ語フランス語
HarpArpaHarfeHarpe
PianoPianoforteKlavierPiano

その他の楽器はとりあえずピアノとハープのみ掲載。後から付け足すかもしれません。