バルトークによるバッハ平均律の難易度順
ピアノ弾き必携の「平均律クラヴィーア曲集」ですが、ただでさえバッハは難しいのに48曲もあるわけですので、弾きやすい曲・面倒な曲はどれ?と知りたくなるところではないでしょうか。
ということで、このブログにある他の記事と同様、平均律についても難易度ランク付けをやってみようと思って下調べをしていたのですが、どうやらすでにバルトークが難易度順に曲を並べ直した版を出版していたらしいので、ちょっと情報をお借りして記事にしてみました。
下のオンラインストアに楽譜の見本が並んでいて、目次で曲順を見られます。画像だと使いにくいので、難易度順をテキストに起こしたものをこのページの下部にご用意しました。ピアノのおけいこのお供にどうぞ。
The Well-Tempered Clavier 1-2 The Bartók Performing Editions
The Well-Tempered Clavier 3-4 The Bartók Performing Editions
なお、平均律の曲をチョイスする際はあまり難易度にとらわれず、好きな曲から順にやっていっても大丈夫かと思います。いくら難しいといっても、ベートーヴェンなんかのフーガと違って「これ5本の指で弾けるの?」というパッセージは平均律には出てきませんので心配はご無用です。
それと、平均律の前に学習することの多い3声シンフォニアとの関連ですが、平均律のフーガでシンフォニアより弾きやすい曲はたくさんありますので、「シンフォニアが完成するまで平均律は弾いちゃいかん!」みたいなガンコな意識は持たなくてよいと思います。
むしろ、シンフォニア14番変ロ長調などは、平均律の難しめのフーガと比べても遜色ない難易度のような気が……
難易度表はこちら
それでは表を2種類ご用意しましたのでご覧ください。まず、お手持ちの楽譜で確認しやすいように、バッハの曲順のまま難易度を5段階にわけて星付けしたものがこちらです。★の数が多いほど難しい曲となります。スマホなど小さい画面の方は見切れている部分を横にスクロールしながらご覧ください。
1巻前半 | 1巻後半 | 2巻前半 | 2巻後半 |
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★★★☆☆ [I-1] C ★☆☆☆☆ [I-2] c ★★★★☆ [I-3] Cis ★★★★★ [I-4] cis ★★☆☆☆ [I-5] D ★☆☆☆☆ [I-6] d ★★☆☆☆ [I-7] Es ★★★★★ [I-8] dis ★☆☆☆☆ [I-9] E ★☆☆☆☆ [I-10] e ★☆☆☆☆ [I-11] F ★★★★☆ [I-12] f | ★☆☆☆☆ [I-13] Fis ★★☆☆☆ [I-14] fis ★★★☆☆ [I-15] G ★★★☆☆ [I-16] g ★★★☆☆ [I-17] As ★★☆☆☆ [I-18] gis ★★☆☆☆ [I-19] A ★★★★★ [I-20] a ★☆☆☆☆ [I-21] B ★★★★★ [I-22] b ★★★★☆ [I-23] H ★★★★☆ [I-24] h | ★★★☆☆ [II-1] C ★★☆☆☆ [II-2] c ★★★★☆ [II-3] Cis ★★★★☆ [II-4] cis ★★★★☆ [II-5] D ★★☆☆☆ [II-6] d ★★★☆☆ [II-7] Es ★★★★☆ [II-8] dis ★★★★☆ [II-9] E ★★★☆☆ [II-10] e ★★☆☆☆ [II-11] F ★★★☆☆ [II-12] f | ★★★☆☆ [II-13] Fis ★★☆☆☆ [II-14] fis ★☆☆☆☆ [II-15] G ★★★★★ [II-16] g ★★★★★ [II-17] As ★★★★☆ [II-18] gis ★★☆☆☆ [II-19] A ★☆☆☆☆ [II-20] a ★☆☆☆☆ [II-21] B ★★★★★ [II-22] b ★★★★★ [II-23] H ★★★☆☆ [II-24] h |
それから、バルトークの難易度順をそのまま並べた表がこちらです。簡単な方から順に並んでいますので、例えば05 [II-20] aとあったら、5番目に簡単な曲は2巻20番a-moll(イ短調)だと読んでみてください。アルファベットの大文字が長調、小文字が短調です。
No.1-10 | No.11-20 | No.21-30 | No.31-40 | No.41-48 |
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01 [II-15] G 02 [I-6] d 03 [I-21] B 04 [I-10] e 05 [II-20] a 06 [I-11] F 07 [I-2] c 08 [I-9] E 09 [I-13] Fis 10 [II-21] B | 11 [II-6] d 12 [II-19] A 13 [II-11] F 14 [I-19] A 15 [I-14] fis 16 [I-18] gis 17 [II-2] c 18 [I-5] D 19 [I-7] Es 20 [II-14] fis | 21 [II-7] Es 22 [I-1] C 23 [I-17] As 24 [II-13] Fis 25 [I-15] G 26 [II-12] f 27 [II-1] C 28 [II-24] h 29 [II-10] e 30 [I-16] g | 31 [II-5] D 32 [II-18] gis 33 [I-24] h 34 [II-9] E 35 [II-4] cis 36 [I-23] H 37 [II-3] Cis 38 [I-12] f 39 [I-3] Cis 40 [II-8] dis | 41 [I-22] b 42 [II-17] As 43 [I-4] cis 44 [I-8] dis 45 [I-20] a 46 [II-22] b 47 [II-16] g 48 [II-23] H – – |
このバルトークの難易度順は概ね納得という感じですが、1曲だけ疑問が残るのが1巻の変ホ長調。これはバルトークによると48曲中19番目で、真ん中よりちょっと易し目のランクということです。確かにフーガはそんなところだと思うのですが、プレリュードの方で左手に困難なフレーズが多く出てきてなかなか厄介です。そうは言っても平均律1巻の中では珍しく、規模が大きく緩急のあるプレリュードで、オルガン曲の聖アン(BWV552)に似た荘厳さがありチャレンジのしがいのある曲だと思いますので、興味がありましたら手に取ってみてください。