Cinematic Studio Stringsのショートノートに翻弄される – 「火の粉舞うスケルツォ」の制作

この度アップロードしたオーケストラ曲「火の粉舞うスケルツォ」の制作について、打ち込み段階で苦労したことを記録に残しておきたいと思います。

https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lQJt17Blwsj2rg7kBMSkcxVWGqRKEiQI0

Cinematic Studio Stringsについては、レガート・マルカートの視聴動画を後日作成しましたので、そちらも合わせてご覧下さい。

今回はスケルツォという活発で速い曲調のため、こういった曲ではスタッカートなど短い音の使用が多くなります。

今回弦楽パートに使用したCinematic Studio Strings (CSS) はショートノートが4種類の長さで用意されており(音が短い順にSpiccato, Staccatissimo, Staccato, Sforzando)、フレージングの柔軟性があります。この辺りは他のサンプルライブラリーメーカーも頑張っていただきたいところ。

ところが今回苦労したのは、ヴァイオリン高域(通常E線で弾く音域)のショートノートの一部が、まるでフランジャーのかかったような「シュッ」という音になってしまうことです。Spitfireの管楽器と質感を揃えるためにEQでハイを持ち上げているので、余計に目立つ気がします。

ネットのDTM指南でよく「隠し味としてマスタートラックにフランジャーを挿入すればいいよ」とかいう冗談がありますよね。このままだと曲を聞いた方から「マスターフランジャーを鵜呑みにしたな」と誤解されてしまう可能性もありそうで(そんなことあるわけない?)手直しが必要です。

話を元に戻して、生楽器サンプルのショートノートは大抵、同音連打時の不自然さを回避するため、複数のサンプルを切り替える「ラウンドロビン」機能を持っています。それはいいのですがCSSのラウンドロビンは、同音連打でなくてもサンプルが切り替わる仕様となっているようなのです。バウンスするたびに鳴り方が違うので、この「シュッ」という音がどこで現れるかもその度変わってきます。これをどう処理するかしばらく悩んでいました。

(ダイナミック)EQなどで気になる周波数域を制御する方法もいろいろ試してみましたが、違和感を取り去ろうとすると弱音器をつけたような曇った音になるためお手上げ状態に。

結局、数小節ずつこまめにオーディオ化して、「シュッ」の違和感があったらレンダリングをやり直す……という地道な作業をとることとしました。1st & 2nd Vnでこれを行います。

当然、小節ごとにブツ切りするやり方ではダメで(音のリリースもブツ切れになってしまうので)、1パートにつきオーディオトラックを2つ用意して交互に録音し、音の余韻をオーバーラップさせることにするわけですが、結構な手間となります。

レンダリングのイメージ

例えば、15〜18小節をオーディオ化したいとなれば、その周り(14小節以前と19小節以降)のノートを一旦消した上で、リリースのため範囲を長めに(例えば15〜20小節)設定してレンダリングし、終わったら消したノートを元に戻します。レンダリングのたびにノートの切り貼りが必要になるため大変ですが、これを1個1個やりました。

こうやって細かい作業をがんばった結果が上の動画の通りですが、とても満足行く結果になりました。苦労の甲斐があったと思います。

情けないことに、作業が終わってから初めて知ったのですが、Cubaseではリージョンだけではなく個別のノートのミュートができるそうです。これに気づいていたらだいぶ作業が楽になったのにね……ツールバーではなくメニューから行かなくてはいけません(編集 – ミュート)。ショートカットはShift+Mというシンプルな操作です。